極小侵襲手術とナビゲーションシステム

大腿骨と骨盤をつなぐいわゆる股関節が変形して、最終的には歩けなくなってしまう変形股関節症ですが、治療法としては、患者さんの負担が少ない極小侵襲手術(MIS)が近年広がっています。そして更に画期的な新手法が登場しました。その股関節手術の方法は、カーナビでおなじみのナビゲーションシステム組み合わせるというものです。この股関節手術の方法により、重症患者へのMIS適用も可能になるということです。変形股関節症というのは、先天性の股関節脱臼や、臼蓋上部の張り出しの形成不全が原因で発症します。人工関節手術は、1960年代にイギリスで開発されましたが、当時は20センチも切開するため、2ヶ月の入院が必要なため、手術に踏み切れない患者さんも多かった。これに対し、MISは、2000年頃から普及しました。MISは、7センチほどの切開幅で、最大でも2週間の入院で済み、リハビリも早い段階で開始でき、回復も早い上に、傷が目立たないという利点もあります。ただ切開幅が小さいため手術には熟練を要し、重症患者には適応できませんでした。

股関節手術のハイテク化

この股関節手術の問題を解決したのが、軍事技術であるミサイルの目標探知機を応用したナビゲーションシステムです。股関節の正確なCT写真を手術前に撮影します。それを基に、設計図を作成し、どのように人工関節を埋め込むかを検討します。ドリルなどの股関節手術道具には、3つの小さな銀色の球が三角形を成すようについていますが、赤外線カメラがその反射光を拾い、位置を特定するのです。その情報が、コンピューター画面の設計図に重なるように映し出され、股関節手術の執刀医はその画面を見ながら人工関節の角度を正確に調整しながら取り付けることができます。そのハイテクぶりは、「後何ミリ削る必要があるか」まで表示されるそうです。股関節手術では、臼蓋の代わりのカップの埋め込みには、正確な位置決めが必要で、間接の変形が激しいと位置決め難しいため、手探りとなるMISでは使えませんでしたが、ナビゲーションシステムを組み合わせることで、可能になりました。

股関節の筋力アップ

股関節周囲の筋肉の力をアップさせることにより、変形股関節症による関節痛が軽減されます。そして、人工股関節手術を受けようとしている方も股関節手術の前から股関節周辺の筋力をアップさせるということは、股関節手術後の早期回復のためとても重要だと思います。運動の方法は、スポーツ用品店などにあるアンクルウエイト(足首につける重り)をつけます。これは、1日1セットでも正しく行えば効果があります。1つめの運動両足を真っ直ぐに伸ばし仰向けに寝て、足首を手前に曲げ、膝を床に強く押しつけそのまま5秒間保つ。その後リラックス。2つ目、足首に1kgの重りをつけ仰向けで寝ます。膝を真っ直ぐに伸ばし、足を上げ、5秒間保ち、ゆっくりと足をおろす。3つ目横向きに寝て、重りをつけた足を真っ直ぐ上に上げる。4つ目うつぶせで重りを着けた足を上げ5秒間保つ。5つ目俯せで、膝を真っ直ぐに伸ばし足首を曲げ、重りをつけ、膝をできるだけ曲げる。なお、運動をする際に、通院中の方や、高血圧症など循環器系の病気の方は、主治医に相談し、主治医からの指示を優先するようにしましょう。

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